
11月29(土)、第187回 Child Abuse 研修会(以下CA研)を開催しました。
2025度のCA研では「里親」をテーマとした全3回の連続研修を実施予定です。
第2回目となる今回も、大阪公立大学教授の伊藤嘉余子氏を講師にお迎えし、お話を伺いました。
本記事では、当日の講座の様子をレポートします。

講義は、「里親不調(予定外の措置解除)」はなぜ起こるのか、という問いから始まりました。
伊藤先生は、里親家庭に委託される子どもたちの中には、虐待経験や発達障害を抱えている場合が多く、また「中途養育」そのものが困難さを伴うものであると指摘されました。
一方で、里親となる側の動機は「家族をつくりたい」「子育てをしてみたい」といった思いが中心であり、当初から困難な養育を想定している人は決して多くない、という点も強調されました。

また登録前の研修で社会的養護について学んでいても、実際に直面すると現実とのギャップに戸惑います。
その時に、里親に対する「好きでやっているのだろう」といった周囲の理解不足や偏見、外部からの十分な支援や専門的な助言が得られない場合、里親さんがSOSを出しにくい状況となり、里親家庭が孤立してしまうことがある、そうした構造的な課題が語られました。
研修では「そもそも里親って?」「「社会的養護って?」というところからの学びが必要だが、それによって里親希望者に過度な不安を抱かせる結果になることも考えなければならない、難しい問題がはらんでいるとのことでした。

里親養育は家庭的というメリットがある一方、施設と異なり専門職によるチームワークや役割分担が難しく、里親さん一人(ワンオペ)に負担が集中するリスクがあり、残念ながら日本は里親委託率が低いにもかかわらず、里親による虐待・不適切養育の発生率が高いという現状があるようです。
里親養育におけるリスクを未然に防ぐためには予防的支援が重要であり、そのためにも里親を孤立させない「チーム里親養育」という意識が不可欠であることが強調されました。

講義では、日本の里親手当制度についても詳しく取り上げられました。
現在の制度では、子どもの年齢による生活費の差がほとんどなく、成長とともに増大する食費や衣服費、学費などの実情が反映されていない点が問題として挙げられました。
海外、特にイギリスの里親制度との比較では、
・子どもの年齢が上がるほど手当が増える仕組み
・子どもの支援ニーズに応じた手当
・誕生日やクリスマスなどの特別手当
などが紹介され、経済的な安心感が里親の養育継続を支えている実態が示されました。
日本の制度は、こうした点で依然として課題が多いことが明らかになりました。

講義では、里親不調により措置解除に至った9事例の分析結果が紹介されました。
プライバシーの観点から詳細は記載できませんが、子どもの年齢や委託期間、里親の経験年数はさまざまであったにも関わらず、そこには共通するプロセスが見られました。
その点からも「チーム里親養育」という意識の重要性を改めて感じました。
また共働き里親という制度を取っているのは、日本独自の制度のため、世界にモデルがなく、日本独自に工夫していく必要があるとのことでした。

最後に、里親家庭を孤立させないためのさまざまな取り組みについて取り上げられました。
アメリカで開発された「モッキンバード・ファミリー・モデル」・・・
地域の里親家庭を複数まとめ、ベテラン里親がハブとなって支える仕組み。
レスパイトの受け入れや日常的な相談ができる関係性が、里親不調の予防につながっている。
イギリスの「コーポレート・ペアレント制度」・・・
児童福祉関係者だけでなく、学校、医療、住宅、大学など、社会全体が社会的養護の子どもを支える責任を持つという考え方。
それぞれの機関が「自分たちに何ができるか」を明示し、実行する仕組みが法的に定められている。

第186回・第187回の講義を通して、里親が直面する困難や、国内外における支援の現状について理解を深めることができました。
学びを重ねるほどに、日本の制度が抱える課題の大きさを強く感じずにはいられませんでした。
子どもたちのかけがえのない子ども時代が、大人や国の制度によって左右されることのない社会へと変えていかなければならないと改めて思いました。
伊藤嘉余子先生、ありがとうございました。

次回(第3回)は、2026年2月28日(土)13:30〜16:30 に開催予定です。
西日本こども研修センターあかし センター長 藤林武史氏を講師にお迎えし、「これからの里親制度(フォスターケア)の発展を考える~福岡市や海外の取り組みを参考に~」についてお話しいただきます。
会場参加・アーカイブ配信の申し込みを現在受付中です。
ぜひ多くの方にご参加いただければ幸いです。
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