
残暑が感じられる8月29日、「2026年度子ども虐待 実践講座」を開催いたしました。
子ども家庭福祉の専門家であられる山縣文治先生にお越しいただき、保育所や幼稚園等における虐待・不適切保育とはどのようなものなのか、発生要因から、その広がりと影響、予防や対応など、基本的な知識と、発生時のポイントをお聞きしました。
近年、「不適切保育」という言葉を耳にするようになりました。
2025年の8月、国では「不適切保育」という言葉の使用をやめて、「職員による虐待」という言葉を使うという指針を打ち出したとのことでした。
講義中、山縣先生からは、原則として「不適切保育」を用い、制度・国の説明では「虐待」を用いて説明していただきました。
冒頭、山縣先生から問いかけがございました。
「権利」と「人権」の違いについて。
権利の対義語は「義務」ですが、人権の対義語は存在しない。人権には条件がなく無条件に保障されるもの。
では、学校や小学校の給食費を払えていない、義務を果たしていない場合、給食を食べることが出来なくなる。その場合、義務を果たしていないのは子どもの親であり、特に乳幼児などでは、子ども本人が義務を果たすという考え方は馴染みにくく、権利ではなく「人権」として保障すべきと話されました。
子どもへの虐待は子どもの権利・生きる人権そのものの侵害。
「してはいけないことをする」だけでなく「しなくてはいけないことをしない」ことも不適切だとおっしゃいました。安全確保のための介入(大声での制止など)で子供が泣いたり、軽く怪我をしたりしたとしても、それを「不適切」ととらえ、委縮すること自体が子どもの人権の侵害になるとのことでした。
全ての人に、瞬時の最適判断を求めることは現実的ではなく、事後の説明と対応(カバー)が大切であるとおっしゃられていました。
また、法制度についても教えていただけました。
従来の「被措置児童当虐待」の対象には保育所が含まれておらず、子ども関係が他の法律(高齢者・障がい者虐待防止法)に比べて狭かったことが問題視されていました。
改正により保育所、認可外保育施設、学童保育、一時保育、小規模保育、病児保育、児童館、子育て短期支援事業など、子どもに関わる事業が広く対象となりました。さらに、意見表明等支援事業などもふくまれることとなった。
子どもに関わる人全員を「疑う」前提の仕組みで、二重三重に子どもを守るための仕組みに改正されたということです。
2026年12月25日からは、こども性暴力防止法(日本版DBS法)が施行される予定です。これは“教育・保育等事業者に対して、職員による子どもに対する性暴力等の防止等の措置を講じることを義務付けるもの”だそうです。
現状では、職員に犯罪事実が確認されたとしても、直ちに解雇できるものではなく、配置転換のみの対応で可能とも書いてあります。また、2003年から2024年の20年間の間に、子どもへの性暴力やわいせつ行為で資格の登録を取り消された保育士は97人。しかし、施設・事業者内が処分という形をとらず自主退職という「温情的」対応をしたり、当該保育士が「自主退職」したりすると、システムが機能しないのだそうです。
山縣先生が講義の初めにおっしゃられていた、人権と人権がぶつかるという意味を深く考えさせられました。

最後に、山縣先生はおっしゃいました。
親子関係の基盤は関係が安全・安心・安定していること。そのために保護者・支援者・行政が努力する必要があるということ。
講義後の質問の場で、チェックリストの活用について説明いただきました。
「点数にこだわりすぎない」ことが大切。チェックリストは話合いや改善策を考えるきっかけとして使うものだとおっしゃいました。
不適切保育の基準は人によって異なるため、定期的に繰り返し実施し、前回との差異を検討し続けることがとても大切なのだとのことです。
保育所・認定こども園等における人権擁護のためのチェックリスト
受講者の皆さま、熱心にご参加いただきありがとうございました。
今回の講義が、子どもたちを取り巻く環境について考えるきっかけとなれば幸いです。
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