
7月12日(土)、7月26日(土)、8月2日(土)の3日間にわたり、「2025年度 子ども虐待 基礎講座」(全7講座)を開催しました。
本記事は、7月12日(土)に行われたとよたまこころの診療所長 精神科医 鷲山拓男先生による「講座Ⅶ 虐待問題に取り組む人のために」についてのレポートと、参加者からお寄せいただいたアンケートを紹介します。

長年にわたり子どもの虐待防止に取り組んでこられた鷲山先生に、3日間にわたる基礎講座の最後を締めくくっていただきました。
「この3日間の講座で学んだこととまるで逆の話、であるかのようなお話を今からします。」という挨拶で始まった鷲山先生の講座は、“変わるべきは虐待する親ではなく、社会の側である”という先生の力強いメッセージが込められた講座でした。

まずはじめに、日本の虐待対応は欧米に比べて約35年遅れていると指摘されました。
1990年頃、欧米では「発見して親子分離する」介入型の政策が誤りであるとされ、支援による予防へと政策転換が始まったとのことでした。
にもかかわらず日本はまだその段階に入ろうとしているというお話でした。

次に、支援者が虐待する親に対して「とんでもない親だ」という否定的感情を抱いてしまう。
虐待対応においては、そのことがまさに問題であり、それでは虐待は減らないという指摘がありました。
親をリスペクトし、敬意をもって支援することが第一歩であるとお話されました。

虐待が発見された時、それはいつも「母親だけの責任」とされがちですが、実際には社会による支援不足が大きく影響しているという指摘がありました。
コロナ禍で支援を必要とする母親が保育園に登園できなくなった事例を挙げ、それは「社会によるネグレクト」であり、子どもを守る責任は社会全体にあるというお話でした。

母親については、「母親だから子育てできるはずだ」という母性神話が、彼女らを孤立させ、援助を求めにくくしているということも強調されました。
支援者は母性神話にとらわれず、できないことを認め、共感と支援で母親を支える姿勢が大切であるということでした。

講座では「母親の責任」など、子ども虐待を親個人の問題に矮小化するのではなく、社会全体の責任と捉える必要があることの重要性を強く伝えられました。
「見守り」という支援が監視となり、そのまま何もしないのであれば、我々自身が虐待の真犯人。
虐待とは虐待する親の問題ではなく、必要な支援を怠り、孤立に追い込んだ社会の側の問題にあるという認識への転換が虐待の予防には必要だということでした。

最後に、鷲山先生から「今回の基礎講座で学んだことを実践できるようにしてください。その上で、はじめて、それだけではダメだと厳しい自己批判をする、その先に、虐待を予防する社会があります。」という言葉を伝えられました。
「問題は社会の側にある」ということを一貫して強調された本講座。
社会とはすなわち、私たち一人一人のことであり、地域で、支援現場で、保護者に関わるとき、私たちがこの講座で指摘されたような視点や考え方に陥ってしまっていないか、自身を内省的に考える大きな機会となった講座でした。

保護者対応を主に行うことが多いですが、親の援助がいかに大切かを日々実感しています。入所する児童とのかかわりを主にするとなると、保護者に対して批判的に考えてしまうことも、子ども側に寄りすぎてしまうこともあります。その中に保護者の対応を主に行っている自分自身がバランスを保つ役割になればと考え、敬意をもって接していくことを改めて意識していきたいと感じました。
20歳代/施設職員
今までの研修とは、全く違う内容。でも虐待問題にかかわる内容なのに、意識の必要や、アメリカやイギリスの前例の知識も学ばせていただき、とてもありがたい。こども家庭センターに関わる自分が、今できること。目の前にいている親子。支援者としてお話しさせていただいている親に対し、敬意を持ち、関わられていただく。具体的にアプローチしていきます。援助の大原則は常に見て、これから支援させていただきたい。本当にありがとうございました。
40歳代/相談員
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