
7月11日(土)、18日(土)、25日(土)の3日間にわたり、「2026年度 子ども虐待 基礎講座」(全7講座)を開催しました。
2日目となる7月18日(土)は、大阪母子医療センター 子どものこころの診療科 主任部長の小杉恵氏を講師にお迎えし、「『虐待はなぜ起こるのか?』について考える~虐待についての基本的な知識と支援について~」をテーマにご講演いただきました。
子ども虐待に関する基本的な知識に加え、虐待に至る要因や、地域・支援機関にできることについて、日々の臨床や書籍・メディアから得られたヒントを交えながらお話しいただきました。

まずはじめに、児童相談所における児童虐待相談対応件数についてお話がありました。
令和6年度の児童虐待相談対応件数は22万3,691件にのぼり、その半数以上を心理的虐待が占めていたそうです。

その背景には、警察がDVを把握した家庭に子どもがいた場合、心理的虐待として児童相談所へ通告することがあり、その通告件数が増えていることも一つの要因として考えられると指摘されました。
日本では、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトの4つを児童虐待と定義しており、2020年4月には、親権者等による体罰の禁止が法律で定められました。

一方で、「虐待」という言葉の捉え方については、「愛情があれば虐待ではない」「しつけの一環であれば虐待ではない」と考えられることもあり、虐待について正しく理解されていない現状についても語られました。
その上で、子ども虐待の定義として、子ども虐待の問題に向き合い続けた小林美智子先生が1994年に述べられた言葉が紹介されました。

次に、虐待に至る要因についての紹介がありました。
虐待に至るまでには「保護者側」「子ども側」「養育環境」の3つのリスク要因があるとのことです。

最近では、母親だけでなく父親にも産後うつがあることが分かっており、父親の場合は母親よりも少し遅れて発症することが多いそうです。
現在の虐待問題の特徴として、衝動性の高い身体的虐待やDV、ネグレクトの深刻化・多様化、精神的に不安定な親の増加、貧困、親自身の未熟化、子育てスキルの低下、離婚やステップファミリーの増加などが挙げられました。
また実母が虐待者として多い一方、母の交際相手や再婚後の養父・継父なども比較的多いことが示されています。
加害の動機も「しつけのつもり」が半数以上でした。
子どもとの関係が十分に築かれていない中で、親としてしつけをしようとすることが、過剰な加害行為につながるケースがあると述べられました。

講座では、こうした子ども虐待に対して、私たちに出来ること、支援についてのお話をされました。
その一つに、DV環境に子どもは、家庭内の緊張を体で感じ取っていることがあり、親に気を使ったり、親をケアするようになったりする場合があり、子どもにとって家庭が安心・安全な場所になっていないと述べられました。
一方で、児童自立支援施設などで、子どもが「安心できる環境」を体験することが大切であると語られました。

実際に、小杉氏が現場で出会った、生後すぐから社会的養護のもとで育った子どもの事例も紹介されました。
乳児期から過敏さがあり、集団生活でトラブルも多く見られましたが、担当者との関係や日常の積み重ねによって、一人で落ち着いて過ごせるようになりました。
安心があるからこそ、一人の時間を豊かに過ごせると語られました。
すべての子どもは、大人になります。
子どものうちから、親や周囲に気を使って、大人になろうとするのではなく、「子ども時代を子どもとして生きること」が重要で、支援する側は、その環境を守ることが大切というお話がとても印象的でした。

小杉氏の病院の育児支援チームでは、「おせっかい」を合言葉にしているそうです。
虐待が起きてから通告・保護する「後追い」の対応だけでなく、「おせっかい」を重ねて予防的に関わることの大切さが語られました。
手続きが難しい家庭に同行したり、書類を書くのを手伝ったり、少し先回りして支えることで、虐待を防げる可能性があると話されました。
またそうすることで、支援される側も「人に頼ってもいいんだ」と感じる経験になると語られました。

来院された妊婦には「良いお産」を経験してもらうことを大切にし、「よく来てくれたね」「あなたが大切」という気持ちで妊婦に関わるそうです。
「大事にしてもらえた」という経験が、次の出産や困った時の相談につながることもあるからと言います。

小杉氏の言う「監視ではなく、関心を」という言葉は、とても心に残りました。

小杉氏の講義を通して、子どもや保護者を取り巻く「人」の存在の重要性を強く感じました。
だからこそ、「支援」をベースに家庭を支えるという視点を大切にし、支援者が、一つひとつの事例に丁寧に向き合える、虐待予防を基盤とした支援体制がより広がっていく必要があると感じました。

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