
7月11日(土)、18日(土)、25日(土)の3日間にわたり、「2026年度 子ども虐待 基礎講座」(全7講座)を開催しました。
初日の7月11日(土)は、大阪市立心身障がい者リハビリテーションセンター診療所小児科の峯川章子氏を講師にお迎えし、「子どもの健やかな発育発達」をテーマにご講演いただきました。
大阪市立心身障がい者リハビリテーションセンター診療所小児科にて小児科医として勤務。大阪市で発達障害に関する施策や4・5歳児発達相談事業に携わるほか、児童相談所でも診療を行っています。

まずはじめに、虐待が子どもに与える影響を理解するためには、本来、子どもがどのように育つのかを知ることが重要であると話されました。
子どもの行動として、落ち着きがない、癇癪が多い、集団行動が苦手、暴言・暴力があるといった問題行動が見られると、その行動だけが注目され、禁止したり注意したりしがちです。しかし、その背景には、体の発育や脳の発達、養育環境など、さまざまな要因が関係していると説明されました。
また、虐待が子どもの発育・発達に与える影響は、心理面や行動面だけでなく、身体の発育にも及ぶことがあるそうです。そのため、子どもの育ちを捉える際には、身体の発育や行動だけではなく、養育環境も含めて、子どもの育ち全体を総合的に捉えることが大切であると話されました。


次に、「成長」と「発達」という二つの言葉の意味の違いについて説明がありました。
成長とは、身長や体重が増えるなど、体の大きさが変化する量的な変化を指します。
一方、発達とは、運動や言語、社会性などが成熟していく質的な変化を指します。歩けるようになる、言葉を話せるようになるなど、認知面や社会性の発達も含まれます。
子どもの育ちを理解するためには、成長だけでなく発達も含めて、両方を見ていく必要があると説明されました。

発育の評価では、成長曲線や体重・身長の増加、頭囲、栄養状態などを中心に見ていくと話されました。
子どもの発育を見る際は、成長曲線の正常範囲に入っているかどうかだけではなく、その子なりにどのような経過で成長しているかを追うことが大切だそうです。
成長曲線では、SDやパーセンタイルを用いて評価します。平均からどのくらい離れているか、100人の中でどの位置にいるかを確認するとともに、「チャンネルを横切る」といって、パーセンタイルの基準線を横切って低下するような変化が見られる場合には、発育の遅れだけでなく、基礎疾患や栄養状態などの背景が隠れている可能性もあるため、注意が必要であると説明されました。
また、子どもの成長には、遺伝や栄養、睡眠、運動といった要因に加え、家族や学校などの教育環境や社会的関係といった環境要因も大きく影響すると話されました。


続いて、ネグレクトが子どもの成長に与える影響についてのお話がありました。
ネグレクトは、十分な食事が与えられない、睡眠環境が整っていない、医療につながっていない、安全な生活環境が確保されていないといった状況から、成長や発達の遅れが見られることがあると話されました。
また、明らかな病気がないにもかかわらず体重増加が不十分である「非器質性発育不良(NOFTT)」が見られた場合には、育児放棄や貧困、保護者の精神疾患、DV、愛着障害、育児知識不足など、環境的・心理社会的要因が大きく関係していると説明されました。


子どもの発達は、運動、言語、認知、社会性などがそれぞれ独立して進むのではなく、互いに関係し合いながら発達していくと話されました。また、発達には「頭から足先へ」「中心から末端へ」「大きな運動から細かい運動へ」という共通した順序があり、どの段階までできているか、どのような順番で発達しているかを見ることが大切だと説明されました。
特に印象に残ったのは、乳児期の愛着形成についてのお話でした。1歳頃に見られる「共同注意」は、大人と同じものに注意を向け、経験を共有することで、言葉や社会性の発達につながる重要な発達段階であると話されました。


子どもの心は、生まれつき完成しているものではなく、抱っこや声かけ、泣いた時に応えてもらうなど、安心できる大人との関わりを積み重ねながら育っていくと話されました。また、「生きる脳」「感じる脳」「考える脳」という脳の働きが発達することで、心も育っていくと説明されました。
さらに、学齢期や思春期は、友人関係や学校生活を通して、自己肯定感や社会性、自分らしさ(アイデンティティ)を育む大切な時期であることも話されました。


虐待による影響は、その場限りで終わるものではなく、子どもの心や体の発育・発達に深く影響することを学びました。
峯川氏は、「命が助かったとしても、外傷だけではなく、発達の遅れや成長障害、精神症状など、さまざまな問題が重なって現れることがあります。中でも最も深く残るのは、心や自尊心の傷つきです。本来、最も安心できるはずの親や養育者から傷つけられることで、『自分は大切な存在だ』という自尊心や、『人は信頼できる』という基本的な信頼感が育ちにくくなる」と説明されました。
このお話は、同日(7月11日)に行われた三宅 和佳子氏による「子ども虐待とトラウマ」の講義とも共通する内容でした。
子ども虐待は、子ども時代だけの問題ではなく、成長、発達、その後の人生全体に大きな影響を及ぼすことを深く学んだ講義でした。


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