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【講座レポート】子ども虐待 基礎講座2026「子ども虐待とアタッチメント」

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7月11日(土)、18日(土)、25日(土)の3日間にわたり、「2026年度 子ども虐待 基礎講座」(全7講座)を開催しました。
2日目となる7月18日(土)は、東京大学大学院教育学研究科 教授の遠藤利彦氏を講師にお迎えし、「子ども虐待とアタッチメント」をテーマにご講演いただきました。

子どもの発達を中心に発達心理学の研究を続けてこられた遠藤氏ですが、その研究のきっかけは、コミック『ピーナッツ』に登場するライナスという少年だったそうです。
ライナスは、いつも毛布を肌身離さず持ち歩いています。実際の子どもたちの中にも、毛布やタオル、ぬいぐるみなどを大切に持ち続ける子どもがいる一方で、そうではない子どももいます。
こうした一人ひとりの性格や個性の違いは、どのような環境で、どのような人に育てられることで生まれるのか。その仕組みを明らかにしたいという思いが、発達心理学の研究を始めるきっかけになったと話されました。

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「アタッチメント(愛着)」と「愛情」の違い

まずはじめに、日本では、アタッチメントのことを「愛着」と表現することが多く、そのことで「愛情」と誤解されることもあるそうです。

アタッチメントとは、子どもが怖くて不安な時に、特定の誰かにくっついて「もう大丈夫」という安心感に浸ることだそうです。
この経験が、幼少期にどれだけ当たり前に与えられているか。
そのことが、人間の一生涯にわたる心と体の健康や、幸せに大きな影響を与えることが、研究では明らかになっているとお話されました。

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ルーマニア・ブカレストの施設で暮らす子どもたち

次に、アタッチメントの研究の一つである「ルーマニア・ブカレストの施設で暮らす子どもたちの研究」について紹介されました。

その施設には、食事やベッドなど、生きていく上で最低限必要な物は、そろっていました。
しかし、子どもの数に対してケアする大人の数が極端に少なく、子どもが泣いても、飛んできて抱きしめてくれる大人はおらず、アタッチメント経験を十分に得ることはできませんでした。

その後、子どもたちの発育を調べると、心だけでなく体の発達にも影響が現れ、脳の成長や細胞の老化にも影響が確認されたそうです。
特に、自己肯定感、自制心、自立心といった「自己」と、人との関係を築く力や共感性、協調性などの「社会性」の発達が大きく損なわれることが明らかになったそうです。

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「自己」と「社会性」

「自己」を形成する上で一番大切な要素は、自分は信じられるという気持ち「自己信頼」だそうです。
「自分はちゃんと人から愛してもらえている」「それだけの価値が自分にはある」という自尊心は、アタッチメント経験を通して養われていくそうです。

また「社会性」を形成する上で一番大切な要素は、人は信じられるという気持ち「他者信頼」だそうです。
自分泣いたり、「助けて」とSOSを出した時、すぐに特定の誰かが飛んできて抱きしめてくれる、応えてくれるという経験が、他者への信頼感を育むそうです。

100年以上にわたる研究から、私たちの心と体の健康、幸せにとって最も重要なのは、上記「自己信頼」と「他者信頼」であることが明らかになっていると話されました。

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「アタッチメント」は、スキンシップと同じ意味ではない

「アタッチメント」を理解する上で重要なこととして、アタッチメントは「スキンシップ」と同じ意味ではないことを強調されました。

アタッチメントとは、子どもが不安になった時に、その感情を受け止め、安心感を回復させることが、その本質であり、その方法は、抱きしめるというスキンシップに限らず、笑顔や言葉かけ、寄り添いなど、さまざまであると話されました。

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アタッチメントの役割は、依存ではなく「自立」

またもう一つ、大変重要なこととして、「アタッチメント」は、子どもの「自立」と密接に関係しているという点をあげられました。

何か不安なことがあっても「自分には守ってくれる人がいる」と信じられることで「好奇心のおもむくままに、外の世界を探索したり、挑戦したりすることは怖くない」と思うことができるようになる。
そんな日常を繰り返すことで、子どもは日々成長しながら、いつか一人で、どこでも、どこまでも行けるようになる、とお話されました。

これは、大人側もまた、子どもに安心感を与え、受け止めるだけでなく、もう一度、背中を押して、再び子どもを送り出すという役割も担う必要があると語られました。

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アタッチメント障害

虐待を受けた子どもたちが、不適切な養育環境やネグレクトなどにより、アタッチメントの形成そのものに大きな問題が生じる、アタッチメント障害についても学びました。
アタッチメント障害には、怖くても誰にもくっつこうとしない「反応性アタッチメント障害」と、誰彼構わず、見知らぬ人にも近づいてしまう「脱抑制型対人交流障害」の二つのタイプがあると紹介されました。

虐待を受けている子どもは、本来、安心を与えてくれる存在であるはずの親が、世界で最もこわいというパラドックスの中に身を置きます。
「近づきたい」と「逃げたい」という相反する気持ちの中、家庭にも、外の世界にも、居場所を見いだせず、二重の意味で傷ついていると語られました。

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まとめ

講義を通して、アタッチメントは「愛情」や「スキンシップ」とは異なる概念であることを理解できました。

講義の中で最も印象に残ったのは、アタッチメントの役割が「自立」を支えることにあるという点でした。社会的養護下の子どもたちに限らず、世間一般を見ても、親自身が子どもに依存してしまったり、自分の都合で子どもを囲い込んだり、反対に突き放してしまったりする家庭は決して少なくないように感じます。講義を通して、改めて「虐待とは何なのか」を自分自身に問い直す時間となりました。

その上で、虐待を受けた子どもは、唯一SOSを出せるはずの相手である親から傷つけられ、その恐怖や不安を受け止めてもらうこともできないという「二重の傷つき」を抱えているというお話は、聞いていて本当につらい気持ちになりました。

今回の講義内容は、1日目に受講した峯川氏による「子どもの健やかな発育発達」、三宅氏による「子ども虐待とトラウマ」の講義とも深くつながる内容でした。それぞれの講義を通して学ぶことで、子どもの発達、トラウマ、アタッチメントが相互に関係していることを、より深く理解することができました。ぜひ、他の講義レポートもあわせてご覧ください。

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